「総括原価方式って一体何のこと?」
「総括原価方式でどうやって電気料金が決まっているの?」
総括原価方式って言葉を聞いたことがある人はいても、
具体的には何なのか知らない人も多いかもしれないですね。
総括原価方式とは、電気料金を決める際に利用される算出方法です。
難しい専門用語ですが、総括原価方式について知っておくと、
他の電力会社との電気料金の差の秘密がわかるようになるかもしれませんよ!
この記事では、総括原価方式の解説とそれを用いることで発生する
メリット・デメリットを紹介します。
電気料金について詳しくなりたいという人は、目を通してみてくださいね!

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この記事の目次
電気料金の決め方
電気料金がどのようにして決められているか知っていますか?
多くの電力会社は電気事業法という法律に基づいて、
総括原価方式で算出しています。
電気事業法とは1964年に制定された法律で、電気事業や電気工作物を製造する会社は、
消費者の身体や財産などを危険にさらさないように製品の安全な状態を保つ
ことを確保しなければなりません。
つまり、電力会社は消費者に
過大な料金の負担をさせてはならないという決まりの基で、
電気料金を決めなければならないということです。
そして、総括原価方式は公共料金などの料金を決める際に用いられる手法で、
運営にかかるコストをベースに会社の利益となる報酬分を上乗せして料金を決定します。
電気はライフラインの1つで、重要なインフラストラクチャー(社会基盤)です。
そのため、電力会社は安定して電気を供給する必要があり、
事業が赤字になって倒産する事態を避けなければなりません。
総括原価方式は “発生するコスト+利益=電気料金” という算出方法なので、
事業者側の赤字が発生しにくい状況を作ることができます。
民間のサービス会社は他社の製品との比較によって料金を決めますが、
- 水道
- ガス
- 電気
などのライフラインを扱っている会社は他社を気にするよりは、
確実にコストを回収することが重要なので、
総括原価方式を利用して赤字にならないようにしているのです。
ただし、電気事業法により電気料金は適正価格に設定されており、
消費者の生活に影響を与えるほどの大幅な高騰は起こらないので安心してください。
電気料金の決め方まとめ
- 電気事業法という法律に基づいて、総括原価方式で算出されている。
- 運営にかかるコストをベースに会社の利益となる報酬分を上乗せして料金を決定している。
総括原価方式の3つの原則
総括原価方式は、総コストに利益分を加えて料金を算出する方法でしたね。
実は、その総括原価方式は3つの原則に則っています。
- 原価主義の原則
- 公正報酬の原則
- 電気の使用者に対する公正の原則
何となくイメージできている人もいるかもしれませんが、「どういう意味?」と思っている人もいるでしょう。
それでは、1つずつ細かく説明していきますね。
原価主義の原則
まず1つ目の原則は “原価主義の原則” です。
原価主義とは、
資産の取得や製品の製造に支出した金額に基づいて決定するという考え方
で、公共事業によく利用されます。
要は、電気を供給するのにどのくらい費用がかかるのかを計算して、
それを基に電気料金を決めなければならない
ということです。
例えば、電気を供給するのに100万円のコストがかかったのであれば、原価主義の原則に則り、100万円+報酬(利益)で計算するということになります。
コストが100万円だったにもかかわらず、コストを150万円と称して料金を計算してはならないということですね。
原価主義では、
必ず適正な原価(かかったコスト)に報酬を加えなければならない
という決まりがあることを覚えておきましょう。
ちなみに、原価主義とは別に
“価値主義”という考え方で料金を決める会社もあります。
価値主義とは、提供された側がサービスに見合うと思われる基準に合わせて決定する考え方です。
つまり、サービスを受けた側が、サービス内容に対してこのくらいの金額までなら払っても良いと思う金額を設定するということです。
例えば、ホテルを経営しており、お客様を満足させる自信があるなら価値主義に則り、1泊3万円の料金を設定することができます。
部屋が豪華で設備も良く、王様お姫様気分を味わえるほど接客が申し分なければ、3万円払う価値があると思う人もいるでしょう。
しかし、3万円を払うだけの価値がないと利用者に判断されたら、それは適正料金ではないということになります。
価値主義の原則を採用すれば、
サービスの質によって料金を自由に変えることが可能です。
公共事業の中には原価主義を原則とした総括原価方式を採用せずに、
価値主義を採用して料金を決めているところもあります。
原価主義の原則まとめ
- 資産の取得や製品の製造に支出した金額に基づいて電気料金を決定する。
- 必ず適正な原価(かかったコスト)に報酬を加えなければならない。
- サービスの質によって料金を自由に変えることが可能である。
公正報酬の原則
次に“公正報酬の原則”について紹介します。
公正報酬の原則とは、
設備投資や支払利息及び株主への配当金に充てるための費用が公正でなければならない
という決まりです。
内容を噛み砕いて説明すると、
料金を決める際にコストに加える報酬を過剰に上乗せしてはならない
ということですね。
報酬とは会社の利益のことで、この中から会社が発展を遂げるための設備投資に回したり、借金返済や株主への配当金に充てたりします。
報酬は事業資産額と研究開発などの投資額に一定割合(3~5%前後)をかけて計算されるので、報酬額を会社が自由に決められるわけではありません。
公正報酬の原則まとめ
- 設備投資や支払利息及び株主への配当金に充てるための費用が公正でなければならない。
- 料金を決める際にコストに加える報酬を過剰に上乗せしてはならない。
電気の使用者に対する公正の原則
最後は“電気の使用者に対する公正の原則”です。
電気事業の公益性という特質上、
利用者に対する料金は公平でなければなりません。
利用者によっては特別扱いをしてはならないということです。
確かに同じサービスを受けているにもかかわらず、特定の人だけ料金が安くなるのは納得できないですよね。
利用者の負担を平等にしなければならないというルールに則って、
料金を設定しているということを把握しておきましょう。
電気の使用者に対する公正の原則まとめ
- 利用者に対する料金は公平でなければならない。
- 利用者の負担を平等にしなければならないというルールに則って料金を設定している。
他の料金算出方法との違い
総括原価方式とは異なる算出方法で料金を設定している会社もあります。
よく利用される算出方法は以下の2つです。
- 価格上限方式
- 比較基準方式
どのような算出方法なのか具体的に紹介します。
価格上限方式
価格上限方式とは、特定のサービスに対して
政府が上限となる価格を定めて、各社で値段の調整を行う方法です。
例えば、野菜を取り扱っているお店がキャベツの値段をつけるとしましょう。
1玉100円くらいをイメージすると思いますが、キャベツを取り扱っている全店が口裏を合わせて1,000円という値段をつけると、消費者は必要以上に高いお金を払わなければならなくなるので迷惑ですよね。
業者が利益を優先するあまり、本来100円で買えるものを1,000円払わないと買えなくなるわけですから。
そうした業者の横暴から消費者を守るために採用されている方法が価格上限方式です。
キャベツの例で続けると、業者が1,000円という常識外れの値段で売ろうとするので、政府が「今年は例年よりも収穫量が少ないので、200円を上限にしましょう」と上限を決めます。
そして、業者で話し合って「今年は少し値段を上げて150円辺りで販売しよう」という流れで料金を決まるのです。
総括原価方式は報酬に関しては資産や投資額に一定割合をかけて算出されるので、多少コントロールすることはできますが、
コスト面に関しては企業の努力次第なので、価格上限方式よりは料金設定の自由度が高いかもしれません。
価格上限方式まとめ
- 政府が上限となる価格を定めて、各社で値段の調整を行う。
- 消費者を守るために採用されている方法である。
- 総括原価方式の方が料金設定の自由度が高い。
比較基準方式
比較基準方式とは、他社との費用を比較し、
基準となる標準コストを定めそこから料金を定める方式です。
おそらく料金を設定する方法で、一番イメージしやすいのが比較基準方式なのではないでしょうか。
簡単に言うと、他の店よりも売りやすくするために料金を調整する方法です。
「他の店よりも高い場合は安くするのでご相談ください」といった販売文句をよく家電量販店などで目にしますよね。
電力自由化前は総括原価方式が主流でしたが、電力自由化により新電力会社が増えているため、
今では総括原価方式よりも比較基準方式が主流になりつつあります。
比較基準方式まとめ
- 基準となる標準コストを定めそこから料金を定める。
- 他の店よりも売りやすくするために料金を調整する方法である。
- 総括原価方式よりも比較基準方式が主流になりつつある。
総括原価方式の3つのメリット
ここまでさまざまな料金算出方法を紹介しましたが、総括原価方式の話に戻して、
ここでは総括原価方式の3つのメリットを紹介します。
- 料金を決定する際の根拠が明確である
- 新しい設備投資を行いやすい
- 電力会社の経営基盤が安定する
この3つについて触れると、なぜ総括原価方式が採用されてきたのかが分かるはずですよ。
それでは、順番に説明します。
料金を決定する際の根拠が明確である
総括原価方式の一つ目のメリットは、
料金を決めるときの根拠が明確になっている点です。
原価に利益を加えて販売するのは商売の基本ですが、利益の金額を決めるのに何らかの根拠が必要でしょう。
小売業であれば、一般的には販売金額の3割が利益になるように設定しますが、サービスとなると少し話が異なります。
付加価値をつけサービスの質を上げることで、
自由に利益額を増やすことができるからです。
電気料金となると消費者は何にどのくらいのお金が動いているのか知らないので、設定した利益額に明確な根拠がなければ、納得してくれない人もいるかもしれません。
しかし、総括原価方式を採用していれば、事業資産額と研究開発などの投資額に一定割合(3~5%前後)をかけて算出された金額が利益となるので、
利用者に料金の説明がしやすくなるのです。
総括原価方式の一つ目のメリットまとめ
- 料金を決めるときの根拠が明確である。
- 付加価値を高めることで、自由に利益額を増やすことができる。
- 利用者に料金の説明がしやすくなる。
新しい設備投資を行いやすい
新しい設備投資を行いやすくなるのもメリットの1つです。
総括原価方式を採用すれば、自然と投資費用を集めることができます。
利益として計算していた報酬分から支払利息や株主への配当金を差し引いて余った分は
投資費用に回すことが可能です。
設備投資用の費用を事業報酬でまかなえるのは、大きなメリットなのではないでしょうか。
総括原価方式の二つ目のメリットまとめ
- 自然と投資費用を集めることができるので、新しい設備投資を行いやすい。
- 設備投資用の費用を事業報酬でまかなうことができる。
電力会社の経営基盤が安定する
総括原価方式ではコストを高確率で回収することができ、
計算通りの利益を確保することが可能なので、
当然経営基盤は安定します。
電力を調達する資金は電気料金に含まれているので、トラブルが起きない限り
確実にまかなえるのは大きな魅力です。
従来の電力会社が倒産しないのは、
この赤字を回避するシステムを利用している
のが大きいでしょうね。
総括原価方式の三つ目のメリットまとめ
- 計算通りの利益を確保することが可能なので、経営基盤が安定する。
- 赤字を回避するシステムを利用しているので、電力会社は倒産しない。
総括原価方式の2つのデメリット
総括原価方式には高確率で赤字を防ぐことができるという大きなメリットがあるのですが、
利用者からすると残念なデメリットもあります。
デメリットは以下の2つです。
- 無駄な設備投資が増える
- コストカットの努力を怠る
デメリットも把握しておくと、電力会社を選ぶときの参考になるかもしれないですよ。
無駄な設備投資が増える
投資がしやすい分、本来投資する必要のないものまで投資をしてしまう可能性があります。
無駄遣いによって会社の利益が減るなら自業自得で済むのですが、
いくら無駄遣いしたところで会社へのダメージはほとんどありません。
利用者が無駄遣い分を負担していることを考えると、怒りが込み上げてくる人もいるでしょう。
会社の成長に繋がるような意味のある投資であれば積極的にすべきですが、
利益を無駄遣いに回すくらいなら電気料金を下げて欲しいものですね。
総括原価方式の一つ目のデメリットまとめ
- 必要のないものまで投資をしてしまう可能性があるので、無駄な設備投資が増える。
- その場合、利用者が無駄遣い分を負担することになる。
コストカットの努力を怠る
総括原価方式によって安定して報酬が得られるので、
コストカットをして利益を生み出すといった企業努力を怠るようになるかもしれません。
初めからある程度の利益が確保されているので、
特に努力をしなくても会社は回ってしまうからです。
サービスの質を改善したり、消費者に還元したりといった企業努力をしなくなると、
顧客離れが深刻化する恐れがあります。
新電力会社が増えつつあるので、大手の電力会社でも少しの怠慢が命取りになるでしょう。
総括原価方式の二つ目のデメリットまとめ
- コストカットをして利益を生み出すといった企業努力を怠ってしまう。
- その場合、顧客離れが深刻化する恐れがある。
総括原価方式の将来の展開
電力自由化により顧客確保が激しくなっている現状、
価格競争に参加できない総括原価方式は不利と言えるでしょう。
比較基準方式を採用している新電力会社に移る利用者が増えているので、
これまで通りの料金設定で顧客を維持できない状況になっています。
確かに赤字を回避できたり投資費用をまかなえたりする総括原価方式は魅力的ですが、顧客が特定の会社しか契約できなかったから成り立っていたのであって、利用者の選択肢が増えた以上、
総括原価方式を採用しても安定して利益を確保できない可能性が高まってきました。
そのため、今後総括原価方式を採用していた会社が別の算出方法に変えることが予想されます。
しかし、いきなり全ての会社が総括原価方式を撤廃してしまうと、消費者に過大な料金を負わせる会社が増えるかもしれないので、一定期間は料金の規制が続くでしょう。
将来的には、規制が撤廃され電気料金に大きな変動が起きるかもしれないですね。
総括原価方式の将来の展開まとめ
- 比較基準方式を採用している新電力会社に移る利用者が増えている。
- 総括原価方式を採用しても安定して利益を確保できない可能性がある。
まとめ
総括原価方式とは電気料金を決めるときに利用される算出方法で、
電気を供給するのにかかるコストに報酬を上乗せして料金を決める方法でした。
高確率でコストを回収でき投資費用を得られるのは大きなメリットですが、
無駄遣いや企業努力を怠る可能性も高まるので、
電力自由化になった現在では不利に働く可能性が高いです。
新電力会社が利用者を囲い込もうとさまざまな企画を実施していますが、
総括原価方式を採用している会社も、利用者を満足させるような企業努力をしなければならない
時代になったのかもしれないですね。

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