2016年の電力自由化にともない、安くてお得な電力会社(新電力会社)が増加しています。
電力自由化による新電力会社への乗り換えは、戸建住宅のみができるわけではありません。
賃貸マンション・アパートの場合も戸建住宅と同じように電力自由化することができます。
ですが、賃貸住宅は戸建住宅と異なり、電力会社を自由に選ぶことができるのか、手続き面などで疑問に思うことがあるかもしれません。
この記事では、
- 賃貸住宅で電力会社を乗り換える際の手続き
- 賃貸住宅で電力会社を乗り換えることができない場合
を紹介をしています。
あわせて、退去する際に行うべきことについても紹介をしているので、参考にしてください。
この記事の目次
賃貸マンションは電力会社を自由に選べない?
電力自由化にともない、戸建住宅は電力会社を自由に選ぶことができるようになりました。
ですが、賃貸マンションに住んでいる場合、電力会社を自由に乗り換えることができるのでしょうか。
この章では、賃貸マンションに住んでいる方が電力会社を自由に選べるのか、どうかを紹介します。
賃貸マンションでも電力会社は乗り換えられる?
賃貸マンションでも電力会社を自由に乗り換えることができます。
ただし、賃貸マンションが「高圧一括受電契約」という契約を電力会社と結んでいる場合は、自由に電力会社を選ぶことができません。
高圧一括受電契約を結んでいないのであれば、電力会社へ連絡をして乗り換えることができます。
この際、大家などに許可を得る必要もありません。
電力会社へ連絡をすればすぐに乗り換えることができるでしょう。
高圧一括受電契約の場合は自由に選べない
高圧一括受電という契約を電力会社とマンションの管理会社が結んでいる場合は、その賃貸マンションでは自由に電力会社を選ぶことができません。
賃貸マンションでも電力会社は乗り換えられる?についてまとめ
- 賃貸マンションでも、「高圧一括受電契約」を結んでなければ、電力会社を自由に乗り換えることができる。
高圧一括受電契約とはなにか?
マンションの電力契約は、
- 低圧契約
- 高圧一括受電契約
の2種類があります。
低圧契約とは、一般家庭のような毎月使う電力が少ない家庭が契約をするもので、変圧器を管理しているのが電力会社になります。
一方、高圧一括受電契約は、変圧器を管理しているのが電力会社ではなく、マンションの管理会社になります。
高圧一括受電契約は、建物一棟単位で契約を結ぶので、家庭ごとに電力会社を選択することができないのです。
発電所から電線を通じて送られてくる電気が家庭に到着するまでの間に、管理会社やオーナーが管理している変圧器があります。
そのため、自由に電気会社を選ぶことができないというわけです。
高圧一括受電契約なのかを確認する方法
高圧一括受電契約なのか、それとも低圧契約なのかを確認する方法として、契約書か物件情報に記載されている可能性がありますので、目を通してみてください。
契約書か物件情報に目を通してもわからない場合、もしくは載っていない場合には、もっとも確実な方法として管理会社やオーナーに直接聞くといいでしょう。
一般的には戸数が50戸以上の大規模なマンションやタワーマンションである場合は、高圧一括受電契約を結んでいる可能性が高くなります。
また、マンションの敷地内に変圧器や管理室かあれば高い確率で高圧一括受電契約です。
高圧一括受電契約なのかを確認する方法まとめ
- 契約書か物件情報に記載されている。
- わからなければ、管理会社やオーナーに直接聞くとよい。
- 大規模なマンションやタワーマンションの場合は、高圧一括受電契約を結んでいる可能性が高い。
- 変圧器や管理室かあれば、高圧一括受電契約を結んでいる可能性が高い。
高圧一括受電契約のメリット
高圧一括受電契約のメリットについて紹介をしていきます。
高圧一括受電契約のメリットは、電気代を安くすることができる点です。
電気代が安くなるので、共用部や維持費も安くなるのが高圧一括受電契約のメリットです。
マンションを高圧一括受電契約にすることで、共用部・専有部にかかる電気料金に高圧電力が適用されます。
共用部(エレベーターやエントランスの照明)に高圧電力を適用した場合、電気料金が最大で50%ほど安くなります。
共用部に高圧電力を適用した場合、各家庭の電気料金は安くなりませんが、管理費や共益費が安くなります。
一方、専用部(各家庭)に高圧電力を適用した場合、各家庭の電気料金が5~10%安くなります。
新築マンションの場合、専用部に高圧電力を採用するパターンが増えてきています。
高圧一括受電契約のメリットまとめ
- 電気代を安くすることができる。
高圧一括受電契約のデメリット
次に高圧一括受電契約のデメリットを紹介します。
高圧一括受電契約のデメリットは、下記の通りです。
- 1~3年に一度停電が必要
- 削減額は新電力に劣る
- 高圧一括受電契約は入居者が電力会社を選べない
- オール電化対応プランが無い
- 共用部分が安くなるが、専有部分は安くならない
この5点です。
オーナーの視点から見た場合、
- 中途解約が難しい
- 売却・賃貸募集時に好まざる影響がある可能性がある
- 高圧一括受電契約の導入が難しい
といったデメリットも存在します。
オーナー側の視点なので、今回は深堀しませんが、高圧一括受電契約の導入に関しては、マンションに住んでいる人全員の同意が必要になります。
また、一度契約を結んでしまうと10年間は解約することができません。
10年経たずに解約してしまうと違約金が発生してしまいます。
さらに、売却・賃貸募集時には高圧一括受電契約を結んでいるという旨を、重要事項説明として説明しなければなりません。
この点で、敬遠されてしまう可能性があるのです。
1~3年に一度停電が必要
入居者に関係のあるデメリットとして、高圧一括受電契約は1~3年に一度の頻度で全停電を行い、設備の点検をしなければならないと法律で定められています。
停電時間に関しては1~2時間程度ですが、停電中、エレベーターは動かなくなり、冷暖房も一時的に使用することができません。
Wi-Fiを利用している方は、一時的にネットが不通になる可能性もあります。
自宅で爬虫類や熱帯魚などを飼っている人、自宅で介護や治療を行っている人に関しては、命に係わる問題となるでしょう。
停電というのは、大きなデメリットではないでしょうか。
削減額は新電力に劣る
高圧一括受電契約と新電力会社を比較した場合、電力料金の削減額は新電力会社の方に分があります。
新電力会社は大手の電力会社と比較して10%以上安くなるプランがあります。
高圧一括受電契約で専有部分の削減率は5%前後になってしまいます。
そのため、高圧一括受電契約にしてしまうと、逆に負担額が多くなる可能性があるのです。
共用部分に高圧電力を適用しているのであれば最大50%の削減が見込め、結果として共益費や管理費用の削減が見込めます。
専用部に高圧電力を適用してしまうと、デメリットだけになってしまいます。
高圧一括受電契約は入居者が電力会社を選べない
高圧一括受電契約の場合、入居者が自分の好きな電力会社を選ぶことができません。
高圧一括受電契約をしていなければ、自分達の好きな電力会社を選ぶことができますが、高圧一括受電契約をしていると好きに電力会社を選ぶことができませんので、これはデメリットであるといって間違いはないでしょう。
オール電化対応プランが無い
高圧一括受電契約の場合、オール電化対応プランがありません。
現在のところ、いつオール電化に対応したサービスが提供されるのかも不明です。
将来的な発展性がない点も、デメリットであるといえます。
共用部分が安くなると、専有部分は安くならない
高圧一括受電契約は、
- 共用部分を安くするプラン
- 専有部分を安くするプラン
があります。
両方とも安くするプランがありません。
そのため、共用部分を安くしてしまった場合、専有部分は従来の電気料金のままで固定されてしまいます。
また、共用部分は最大50%の節約が可能ですが、専有部分を高圧電力にした場合、5%程度しか節約になりません。
新電力会社と比較した場合、5%程度の節約ではそこまで大きな節約にはならないので、この点はデメリットであるといえます。
高圧一括受電契約のデメリットまとめ
- 1~3年に一度停電が必要である。
- 削減額は新電力に劣る。
- 高圧一括受電契約は入居者が電力会社を選べない。
- オール電化対応プランが無い。
- 共用部分が安くなるが、専有部分は安くならない。
高圧一括受電契約はお得なのか?
高圧一括受電契約は事業者から見た場合は、お得な契約になります。
しかし、入居者から見た場合は、自由に電力会社を選ぶことができなくなる、1~3年に一度の頻度で停電をするなどのデメリットがありますので、お得であるとはいいがたいです。
高圧一括受電契約はお得なのか?まとめ
- 事業者から見た場合は、お得である。
- 入居者から見た場合は、お得であるとはいいがたい。
高圧一括受電契約を解約することはできる?
高圧一括受電契約を解約するためには、マンション管理組合が高圧一括受電業者へ違約金を支払う必要があるのです。
なぜ違約金が発生するのかといえば、高圧一括受電にする場合、初期投資として変電施設や新しいメーターの設置が必要になります。
この初期投資の費用を支払わない代わりに、10年間という長期間の契約をするのです。
それを途中で解約するので莫大な違約金が発生するのです。
そのため、高圧一括受電契約を解約するためには、マンション管理組合の同意、入居者全員の同意が必要になりますので、総会時に解約の発議をして可決される必要があります。
高圧一括受電契約を解約することはできる?まとめ
- 莫大な違約金を支払う必要がある。
- 解約するためには、マンション管理組合の同意、入居者全員の同意が必要である。
賃貸アパートの場合はどうなるのか?
賃貸アパートの場合、電力自由化の恩恵を得ることができるのでしょうか。
この章では、賃貸アパートの場合、自身が好きな電力会社に乗り換えることができるのか解説をしていきます。
賃貸アパートの場合でも電力会社は乗り換えられる
賃貸アパートの場合、高圧一括受電契約をしている可能性は低くなります。
そのため、賃貸アパートであっても、戸別に電力会社を乗り換えることは可能です。
高圧一括受電契約は、50戸以上の大規模なマンションでなければメリットがありませんので、アパートが高圧一括受電契約を結ぶことはほとんどありません。
電力会社を乗り換える際に大家への報告義務などもありません。
また、大家の許可も得る必要はなく、自分が乗り換えたいと思ったときに、乗り換えることが可能です。
賃貸アパートの場合でも電力会社は乗り換えられるまとめ
- 賃貸アパートの場合でも、戸別に電力会社を乗り換えることは可能である。
賃貸マンション・アパートで電力会社を乗り換える方法
ここからは、賃貸マンション・アパートで電力会社を乗り換える方法について解説をしていきます。
賃貸マンションであってもアパートであっても、高圧一括受電契約を結んでいなければ、電力会社を乗り換えることができます。
高圧一括受電契約を結んでいるか否かは、オーナーや大家へ問い合わせるとすぐにわかるでしょう。
賃貸マンション・アパートで電力会社を乗り換えるには?
原則として、高圧一括受電契約を結んでいないことが、乗り換えるための条件になります。
高圧一括受電契約でなければ、気になる電力会社へ申し込みを行います。
気になる電力会社へ申し込みをすることで、申し込まれた電力会社が現在契約している電力会社の解約手続きを代行してくれます。
その後、スマートメーターが設置されていないのであれば、乗り換えを申し込んだのちに、お住まいの電力会社から工事日の連絡が来ます。
スマートメーターに切り替える際には費用はかかりません。
また、工事に立ち会う必要もありません。
スマートメーターに切り替えが終わったら、自動的に新しい電力会社に乗り換えが完了となります。
マンション・アパートだからといって、一戸建てと異なる手続きはありません。
また、大家や管理組合などへ、電力会社を切り替える旨の連絡を入れる必要もありません。
スマートメーター設置の許可を得る必要もありません。
賃貸マンション・アパートで電力会社を乗り換える方法まとめ
- 気になる電力会社へ申し込みをする。
- スマートメーターの設置が行われる。
- 自動的に新しい電力会社に乗り換え完了。
賃貸マンション・アパートから退去する場合
電力会社を好きな電力会社にした場合、賃貸マンション・アパートから退去する際に、なにか特別なことをしなければならないのでしょうか。
特に、新電力会社に乗り換えますと、スマートメーターを新しく設置することになります。
このスマートメーターは現状復帰をするにあたり、返却などをしなければならないのでしょうか。
この章では、賃貸マンション・アパートから退去する場合の手続きについて紹介をします。
賃貸マンション・アパートから退去する場合スマートメーターはどうなるのか?
そもそもの話ですが、電気メーターは電力会社の所有物になります。
大家や管理組合が管理しているものではありません。
管理しているものではありませんので、新しく設置する際には大家や管理組合に連絡する必要がないわけです。
そして、日本政府は2023年までに、すべての家庭にスマートメーターを設置することを目指しています。
そのため、賃貸マンション・アパートから退去する際にスマートメーターはわざわざ取り外す必要はありません。
賃貸マンション・アパートから退去する際には原状回復の義務がありますが、スマートメーターは、原状回復の必要がありません。
新しくスマートメーターを設置したのであれば、設置したまま、何もせずに退去して問題ありません。
賃貸マンション・アパートから退去する場合まとめ
- スマートメーターを取り外す必要はない。
まとめ
電力自由化にともない、電力会社を自由に選べることになりました。
賃貸マンション・アパートでも、例外ではありません。
電力会社を自由に選べます。
ただし、高圧一括受電契約を結んでいる場合は自由に電力会社を選ぶことができないので注意しましょう。
高圧一括受電契約を結んでいるかどうかは、大家か管理組合に聞くことですぐにわかります。
賃貸マンション・アパートに住んでいるからといって、電力会社を切り替える際に何かしら特別な手続きをする必要はありません。
戸建て住宅と同じ手順で電力会社を切り替えることができます。
退去するときも、特別な手続きは必要ありません。
設置したスマートメーターを片付ける必要なく、退去していいのです。
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